今週のお題「読書感想文」
西原理恵子さんの
この世でいちばん大事な「カネ」の話
私がこの本と出会ったのは35歳で手術入院していた時でした。
開腹手術をして、麻酔の影響か丸1日吐き続けて数日後、やっと病院内を自力でゆっくり歩けるようになった頃。
病院が、外来患者や入院患者のために用意してくれている本棚にこの本があったんです。
手術とかしたことがある方には共感してもらえると思いますが、手術後ってなかなか難しい本が読めないんですよね。
最初は子供が読むような絵本ばかり見ていたのですが、漫画家である西原理恵子さんの描いた表紙を見て、なにか簡単に読めそうな気がしてこの本を手に取りました。
読みやすい語りの本でしたが、これがなかなかショッキングな内容でした。
西原さんの壮絶な人生を通しての、お金との付き合い方が熱く語られているのですが、西原さん自身や西原さんの出身地の周りの人々の貧しさや、その人たちのその後など、赤裸々に語られていたという記憶があります。
なんせ読んでから随分経っているので、事細かには覚えていないのですが、その時の私の心に響いてずっと忘れないでいる西原さんからのメッセージがあります。
今は本が手元にないので正確には書き出せませんが、
「自分で食べたもののお金くらいは自分で払うような人でいなさい」
というようなことをおっしゃっていました。
どうしてこのメッセージがその時の私の心に刺さったか。
その頃の私には友達以上恋人未満みたいな人がいました。
習い事で出会ったその人は何歳かも職業も何も知らなかったけれど、ありえないくらい特別に優しく親切にしてくれたので、この優しさを一生もらえるならこの人が何者でも構わないように思ったくらいでした。
でも初めて二人だけで飲みに行って、その人が有名国立大学の大学院を出て、一流企業に勤務している人だと分かった時、内心「ラッキー」と思ってしまった私がいました。
手術のことも一緒に乗り越えてくれそうな雰囲気で、毎日メールのやりとりもしていましたが手術の半月くらい前から連絡がなくなってしまいました。
そういうことか〜、やっぱりちゃんと付き合ってたわけじゃないし逃げたいかもね、と冷静に受け止めていましたが、手術の前日に久しぶりに、その人から応援のメールが来た時には少し心が動きました。
でも多分それは彼が人としての何か責任感みたいなものを感じてのやっとのメールだったんだと思います。
そんなこんなで苦しい手術後を乗り越えて読んだのが、西原さんのこの本でした。
自分で食べたもののお金は自分で払うような人でいなさい、と言う西原さんのメッセージに身が引き締まる思いがしました。
男性の肩書きや収入に対して「ラッキー」なんて思った自分に向けられた言葉のように感じました。
そういうことに目がくらむと全てがバラ色に見えて大切なものを見る心の目が見えなくなってしまうとも思ったし、自業自得だとも思いました。
お互い様ってヤツです。
本当の意味でのお互いの絆が生まれていなかったんですね。
経済的にも精神的にも自分の足でしっかり立たなきゃ。
外来時間外に一人、待合室のベンチに座って思ったのでした。
手術から数ヶ月後、すっかり元気になった私に、その人は嬉しそうにまた近づいてきてきましたが、もう会うのはやめました。
その後30代後半で婚活を始めた私は、幾度となくデート的なものをしましたが、食事やお茶をする時にいつも西原さんのメッセージを思い出しました。
私も1円単位で割り勘にしようとかそこまでではないのですが、代わりばんこに支払いをするくらいにはいつも気をつけていました。
何か大切なものを忘れてしまわないように、失わないように。
まったく、私の個人的な事情にひきつけまくった感想文になってしまいましたが、どんな方にも一読の価値がある本だと思います。
私はハードカバーのを読みましたが、今は文庫本も出ているようですね。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。