ご飯のお供は色々ありますね。
私が忘れられないご飯のお供は「焼きたらこ」。
30代半ばに手術入院をしたことがありました。
手術をした後、しばらくは点滴で栄養を取っていたんですけど、数日経つと、食事が重湯からはじまりました。
重湯って超うすいおかゆみたいな感じのです。
食事の時間を迎えるたびに、ステップアップしていって、重湯はだんだん濃くなっていきました。
私もこのまま順調に食事が取れるようになるんだと思っていました。
重湯がおかゆになっていき、そしてちょっとしたおかずもつき始めたんです。
わ〜い、久しぶりのおかずだ〜!
と喜んだのもつかの間。
このおかずを食べ始めた時に、大変なことが起こりました。
お腹に激痛が走ったんです。
何か食べると、お腹が痛くて痛くてしばらくはベッドの上をのたうちまわりました。
何なのこれ?って感じ。
担当の先生曰く、久しぶりに固形のものを食べると、私みたいに腹痛の症状が出る人もいるということでした。
それから私は固形の物を食べるのが怖くなってしまいました。
何度か挑戦するものの、いつもお腹が痛くなる。しかも激痛。
もう消化の仕方忘れちゃったの?
私の胃!腸!しっかりして!
こんなに痛くなるならもう何も食べたくない!
そんな時、夕飯のおかずに出てきたのが大きな焼きたらこだったんです。
あ〜、焼きたらこ♡
S サイズの卵ぐらいの大きさはありそう。
ぷっくりとした丸いフォルムに薄ピンク色の肌。
張り詰めた皮がはじけて中のつぶつぶたちがモリっと飛び出している部分もある。
なんて魅惑的なんだろう。
なんて美味しそうなんだろう。
小さい頃からたらこ好きの私。
普通のたらこも辛子明太子も、たらこスパゲッティも、たらこふりかけも、みんな好きでした。
中でも焼きたらこは大好き。
ご飯と一緒に食べたらもうサイコー!
なんだけど…。
今食べたら絶対お腹痛くなるよね。
でも食べたい。
でもお腹痛くなる。
食べたい
痛くなる
.
.
食べられない
.
.
結局わたしは焼きたらこを食べるのを諦めました。
その次の日ぐらいだったと思いますが、固形物を食べない私を心配してくれた看護師さんに、私は弱った声で
「もう無理です。もう食べたくないから点滴にしてもらえませんか?」
と懇願しました。
看護師さんは、
「このままね、口から食べない生活を送ってたら、口から物を食べることができなくなっちゃうのよ。」
と、子供を諭すように優しく言いました。
「口から物を食べられなくなる」
その言葉は私の心にショッキングに刺さりました。
それから私は少しずつ固形物を食べるようになり、それとともに私の胃腸も消化の仕方を少しずつ思い出したのでしょうか。
食後の痛みは次第になくなっていきました。(今でもあの看護師さんの言葉には感謝しています。)
それからは体力もどんどん回復して、数日後には自分で売店にプリンを買いに行っちゃうくらいになりました。信じられませんね。(笑)
あれからもうずいぶん時が流れましたが、焼きたらこを食べる度に、いつもあの入院していた時に食べ損ねた焼きたらこを思い出します。
それにしても、退院後、今に至るまであの時ほど美味しそうな焼きたらこを見たことがないな〜。
もしかしたら食べられなかったことで、私の記憶の中であの焼きたらこの魅力が増幅しちゃってるのかも。
そうだとしたら、これからの人生の中であの時以上の魅惑的なシチュエーションで焼きたらこと出会えることってあるんだろうか?
いつか出会える日が楽しみなような、でもそのシチュエーションもどんな場合なのか、(食べられない場合もありそう。)
複雑です。(笑)
あ~、あの時の焼きたらこが食べたい!
今週のお題「ごはんのお供」でした。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。